3連休目前の1週間、週末は久々のテント泊だというのに、仕事が手につかないほど緊張した。
今回の山行の目的は、船窪小屋を訪れること。
そして、来季小屋番として働かせてもらえないか、詳しいお話を伺うことだったからだ。
不安と期待の入り混じった気持ちを胸に、金曜日の深夜11時、自宅を出発した。
目覚めたのは、朝7時だった。
どうやらまた今回も寝過ごしたようだ。
昨日まであれほど緊張していたのが嘘のように、車の中でぐっすり眠った。
登山届を提出し、靴紐を締め、帽子をかぶり、ザックを調整する。
ついにこの日がきた。
船窪小屋までのコースタイムは6時間。
大丈夫。13時40分には小屋にたどり着ける。
曇り空の下、私は歩きはじめた。
道端にはアジサイが咲き誇る。
少し歩くと、1/10の看板を発見。
140Mごとに高度を教えてくれるので、とても分かりやすい。
また少し登っていけば、2/10。
よくよく見ると、「はじめの急登終盤」の文字。
そうか、急登だったよな。
こんなとき、良くも悪くも自分が鈍感だということに気づく。
急登だろうが何だろうが、今回は達成しなければならない大目的がある。
それにしても、ガスってきたなぁ・・・
ときおり、風にあおられた木の葉から水滴が落ちてくる。
木の根やキノコを見ながら、前へ進んだ。
可愛いらしい看板。
その先に、鼻突八丁のはじまりを告げる標識。
高度差約140mで鼻突八丁は終了。
お疲れさまって書いてくれている。
作ってくれた人の優しさだなぁ。
このあたりから少しずつ視界がひらけてくるが、あたりは真っ白。
こんなときは、もし晴れていたら何が見えるのかを考えて歩く。
勝手に「妄想登山」と呼んでいるけれど、とても捗る日だ。
そんなことをしながら歩いていると、何となく薄日が・・・
天狗の庭に出た瞬間、本当に一瞬だけ遠くまで視界が開けた。
烏帽子や槍穂を拝むことができた。
こんな景色だったのか・・・
さらにお花畑を歩いていくと、雲の間から岩稜が顔を出した。
今回の2泊3日の山行が、このあと全部雨でもいいと思った。
自然が見せてくれる表情は本当に多様で、それを知ることは、この上ない幸せだ。
もう少しで目的地・・・
船窪小屋は、どんなところなんだろう。
どんな人がいるんだろう。
何て話せばいいんだろう。
一抹の不安と緊張を感じながらも、心は山に支配されていた。
小屋にたどり着くと、小屋番さんがお茶を出してくれた。
それからすぐに「山の上のお母さん」が表に出て、鐘を鳴らしてくれた。
船窪小屋といえば山の上のお母さん、というほど、多くの人に愛されているお方。
ついに、お目にかかることができた。
何だろう、この至福のひとときは。
テント場の受付を済ませたところで、意を決して訊ねてみた。
「突然すみません。来季ここで働かせていただきたいのですが、お話を聞かせてもらえませんか?」
「あら、気が早いね」
「どうぞ上がって、いろいろ聞いていってください」
突然の申し出にもかかわらず、小屋番さんとお母さんは快く招き入れてくれた。
お父さんと小屋番さんが、小屋のこと、仕事のことを、丁寧に教えてくれた。
突然お邪魔したのに、こんなに親切にしていただけるなんて・・・
小屋の皆さんの優しさが、とても嬉しかった。
テント場に到着したのは、14時30分頃だったと思う。
小屋に到着したのは12時10分だったから、相当長居をしてしまった。
小屋からテント場までは15分程度、テント場から水場までは5分ほどかかる。
少し早めの晩ごはんを済ませ、夕焼けを眺めた。
寝る準備を終えて、シュラフにくるまりながら明日のことを考えた。
お天気は・・・晴れではなさそうだ。
まぁいいか。
ここにもう一泊することだけは決まっている。
明日のことは、起きた時間と、天気と、気分で決めよう。
選択肢は、
・どこへも行かずに読書
・船窪岳ピストン
・北葛岳ピストン
・蓮華岳ピストン
・船窪乗越を下り、針ノ木峠を登り、蓮華、北葛、七倉を回る1週コース
目覚めてすぐに動けるように、荷造りをした。
今日の出来事を夢のように感じながら、静かに目を閉じた。
うめこ
コメント
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