1人で山登って滑って雪穴掘って、何が楽しいの?-雪洞泊の記録-

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今日は、雪洞泊をしたことを書きたいと思います。2年ほど前からずっと雪洞を掘りたかったのですがなかなかタイミングがなく、先日たまたまそんな気分になったのでやってきました。

事の発端は「梅ちゃん、明日どこ行くの?」「図書館ですかね~」「明日晴れなのにもったいない!!」「じゃあ1人だし鍋倉山でも行こうかな」という会話でした。その時は日帰りの予定だったのですが、せっかく行くので泊まってこようかなと、ついでに天気図と実際の天気を観察したいなと。

そんなわけで、記録を書こうと思いますが、そもそも山スキーやバックカントリーについてイメージが沸かな方もいると思いますので、どんなことをやっているのかをざっくばらんに書いていきたいと思います。世間では「新雪求めて滑走禁止エリアや山を滑り遭難・・・」みたいな報道が多く、山に興味がない人からは迷惑、バカじゃないの、みたいな印象を持たれていたりしますが、実際はどんなものなのか、少しでもご理解いただけると嬉しいです。

まず、「山スキー」と「バックカントリー」の違いですが、やっていることは基本的に同じです。ただ、私の言語感覚的に「山スキー」は登山の一部(下り)がスキーになったイメージ、「バックカントリー」はサラサラのパウダースノーを求めて山に入っていく(滑りメイン)イメージです。まぁ、何と呼んでも変わりませんが、山を滑る人間には大きく分けて2種類いるということです。ちなみに私はどちらかと言わなくても前者です。雪質はそこまで重要視しません。

さて、今回歩いたのはざっくりこんな感じ。マウスで線を引いているので、実際とは微妙に異なる場所もありますがご容赦ください。1日目が緑色の線で、2日目が青色の線です。基本的に、尾根の上を登っていきます。滑走時は、変な沢に迷い込んだり、落ちて脱出不可能にならないようにします。

本当は2日目に滑っている尾根を登った方が安全だし日射で雪も締まっているので良いらしいですが、鍋倉のトレースは大体緑のラインを引いた尾根の方についています。緑のルートを行く場合は、沢に迷い込まないように注意が必要です。滑るのは緑のラインの少し上あたりが北斜面で日射の影響が少なく、雪質が保たれるので良いのではないでしょうか。

右下の赤い×が車をとめたポイント、中央の×が今回雪洞を掘ったポイントです。民家の脇に路上駐車することになるので、道をふさがないように注意が必要です。また、除雪車の転回場所にもなっているようですので、邪魔にならないようにしてください。また、池から流れている川(農業用水路?)を渡るポイントも逃さないように要注意です。山頂までは3時間~3時間半程度でたどり着けると思います。

山スキーは、地形図を見てラインを決めるのが難しくもあり、楽しくもあります。どこをどう登って、どう滑るのか。また、前2~3日の天気を把握して、雪がどのような状態になっているのかを知っておく必要もあります。雪崩は起こりやすいのか(雪は安定しているのか)、どのような雪質なのか、などなど予想はできるわけです。これが難しくて、行ってみたら全然違うっていうことがしばしば・・・精度を上げられるように日々勉強です。


さて、登っていくのですが、その前に装備の説明を簡単にしたいと思います。目線を下に向けると、こんな感じ。

スキーの裏に滑り止めのシールを貼って、トレッキングポールでバランスを取りながら登っていきます。緑色のがシールです。このように貼ったり剝がしたりできます。ちなみに、colltexのWhizzzを使用しています。このシールのいいところは、糊面どうしをくっつけても問題なく、ぬるま湯で洗えば糊面がきれいになり、粘着力も復活するところです。つまり、ちょっと扱いが雑になっても大問題には発展しないので、風が強い日も、雪が舞う日も、使いやすいシールだなと実感しています。

山スキー用のビンディングはかかとが上がるようになっています。私が使っているのは、DYNAFITのSpeed Radicalです。このビンディングは、写真のように後ろがぐるっと回せるようになっていています。回すことでかかとをフリーにします。ブーツの前の部分とビンディングを固定して、かかとを上がるようにしているわけです。

なかなか説明してもわかりにくいですね・・・機会があったらもう少し詳しくお話ししたいと思います。

他にも何種類か山スキーに使えるビンディングはありますので、興味のある方は調べてみてください。

ブーツも、「ウォークモード」がついていて、くるぶしから上が動くようにできますので、思っている以上に登りやすいです。スキーブーツは通常ガッチリと足を固定するのですが、山用のブーツは全体的に柔らかい造りになっています。


では、登っていきたいと思います。

朝、寒くて布団から出たくなくて葛藤していたら、駐車場に着いたのは結局10時少し前・・・やる気あるんかい、と言われそうですね。実際のところ、そんなにありません。いつものごとく、ゆるゆるのんびりと。

まばらなブナの林。

標高が上がってくると、木々が真っ白。薄日が差しそうで差さない、絶妙な雲の厚さ。

前の人がつけたトレース。2本並んでいるので、話しながら登っていったのかな・・・

雪の結晶が降ってくる。子供の頃から雪には慣れ親しんでいて、毎冬ずっと結晶を見てきたけれど、こんなにきれいなものが自然に作られて、しかも目に見える形で私たちの前に現れるって、なんてすごいことなんだろう。

雪は、大人になった今でも子供の頃と同じ気持ちで眺められる、数少ないものの1つ。私の初恋の相手であり、これからも命ある限りずっと慕い続けるのでしょう。

山頂に到着。時刻は13時30分くらいだったと思います。ザックとポールとカバン(小)。白い世界にポツン・・・

雪も掘らなくちゃいけないけれど、とりあえず一本だけ北斜面を滑ることに。ソロなので食べ物と水とシールのみ持って、大きなリュックは山頂にデポし、出発。

ふわふわの軽い雪はほぼ摩擦がなく、まるで浮いているよう。ときどき、体がなくなってしまったかのような錯覚に陥ります。

ときには立ち止まり、森の中ただじっと佇んで木の気持ちになりきろうとしたり・・・うん、言葉で書くと変態だね。

そんなことをしていたら、陽が差してきた・・・

前のパーティーがつけたトラックが何本か見えます。

青い空と白く染まった木々、そして雪。なんて美しい、平和な世界なんだろう。

少し滑ったところで登り返し、再び山頂に戻ってから、今夜の宿を見つけるべく、南の尾根へ。雪洞掘るのに、人通りの多い北の尾根沿いじゃ落ち着かないもの。

しばらく行くと、比較的緩い斜面に素敵なブナの大木を発見。もう少し滑ろうかどうか悩んだけれど、この木の隣で寝たいなと思ったので、ここに穴を掘ることにしました。時刻は2時45分ごろ。

ちょっと掘ったところ。

板とブナを入り口から見上げたところ。

ブナの木アップ。なんて素敵な木なんだろう。夏なら藪に阻まれて、絶対に会えないし、触れることもできない。こんな出会いがあるのは、藪が埋まる冬ならではのお楽しみ。

掘りすすめると、だんだん入り口が塞がっていっちゃうのよね。2人いると手分けできるからいいのだけれど、何せ1人なので「穴を掘り進める」→「雪を外に出す」という工程の繰り返し。

陽が傾いてきた・・・

まだ掘っていると、いよいよ陽が山の向こうへ行ってしまいました。

そんなところで、薄暗くなってしまったけれど本日のお部屋完成!2時間くらい?もっと?掘ったかな・・・。高さ120cm、幅100cm、奥行き170cm程度の快適な即席ハウス。

そして、ごはんを食べる。雪洞の中で食べるラーメンは最高に美味しかったです。

さて、寝ましょうか・・・入り口塞ぎきれてない。これじゃ意味ない。でも気にしない!!本当はツェルトが欲しいところですが、ここ2年くらい買おう買おうと言い続けるもいまだに入手していないアイテム・・・山スキーやるなら必携なんだけど。

布団は、-14℃までの寝袋に、インナーシーツ的なものを合わせ、その上からSOL Bivvyで包みました。

ちょっと薄暗いけれど・・・室温は-3~4℃ってとこでしょうか。これは、寒い我が家と同じくらいの温度です(笑)。入り口をちゃんと塞げばもう少し暖かいんだろうな。

月の美しい晩だこと・・・

私の命の音だけが聞こえます。心地いいなぁ。

今日も素敵な一日でした。おやすみなさい。


翌朝、7時起床。

夜一度だけ寒くて目が覚めましたが、耐熱ボトルにお湯をいれて湯たんぽを作ってぬくぬく寝ていたら、朝になっていました。

 

朝ごはんを食べて、1日の予定を計画。

本当はね、エアマットは穴があいたら大変なので、あんまり冬山には使いたくなかったけれど、エアじゃないマットは残念ながら持っていないので、これにしました。エアじゃないマットも、ツェルト同様2年くらい買おう買おうと言いつつ買っていないアイテム。

今年は冬用のテントとエアじゃないマットを買って山に入り浸ろう思っていたのですが、来季に持ち越しかな・・・まだ冬は終わらないから分かんないけど。

室温は相変わらず-3~4℃。

外に出てみると・・・

昨日掘った雪が、木の周りだけ少し溶けてる!!やっぱり木は温かいんだ・・・すごい。

一応持ってきたプローブ(長い棒)、またの名をゾンデ。これは雪崩に埋まった人を探したり、積雪を測ったりするための道具。迷ったけど、なんか持ってきちゃった。ただの荷物にしたくなかったので、出してみました。そして、雪に刺してみました。どんどん進む・・・どこまで進むんだ・・・??止まった!!285cmのプローブがここまで埋まったので、積雪250cmほどはあるようです。雪がたっぷりあるって、幸せなことね。

ちなみに、写真にちょくちょく写っているスコップと、このプローブと、ビーコン(小型の発信機)は、雪崩が発生するかもしれない冬山では必携のアイテムです。

さて、快適な家を出なくては・・・また10時になっちゃったよ。(どんだけゆっくりしたんだよ!!)

ブナさんありがとう。一宿の御恩は忘れないよ!

雪洞をあとにし、少し進むとこの景色。飯山地域の人里。

このあと、ケータイの電池が切れてしまったため写真はありませんが、最初の地図にあるように、山頂から黒倉岳方面へ滑り、少し遊んでから山頂に戻り、南の尾根を滑って帰ってきました。黒倉から見る鍋倉は、とても美しいのでぜひ行ってみてください。

ちなみに山頂には、すでに2パーティーおりました。早いなぁ・・・(私が遅いだけなんだけど)

午後からは少しずつガスが濃くなってきて、標高が下がるにつれ、雪は少しずつ重くなっていきました。

今回は、ウサギに会えました。野生のウサギに出くわしたのは初めて。白い雪の上を、同じように白くてふわふわしたものが動いていて、まるで雪の精のよう。足跡があったので、キツネもいるようです。

友人に話したらタイトルのごとく「1人で山登って、滑って、雪穴掘って、何が楽しいの?」と言われたけれど、楽しいというか、山はとにかく居心地がいいんです。心を自由にしてくれる。

山の懐に身を委ねれば、この身で抱えている悩みや欲望なんてものは最初から存在しなかったかのように無になれる。木のように、物事に執着せずにいられる。この命ひとつあれば、それでいいと思える。そして最後は、その命にさえも執着せずに消えてなくなりたい。生きるということは、人間が考えるよりもずっとシンプルなんだと山は教えてくれます。

話が横道にそれましたが、山を滑るのがどういうことなのか、ご想像いただけたでしょうか。この記事で、少しでもバックカントリーや山スキーへの理解が深まると嬉しいです。

久しぶりの長い記事、最後までお付き合いいただきありがとうございました。

    
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