人生で1番最高だった冬の終わり

アバランチコントローラーとして迎えたはじめての冬が終わった。

12月下旬から3月末までのおよそ100日間、それは夢のようで、飛ぶように過ぎていった。

この冬は、学びの冬だった。

覚えなくてはいけないこと、学ばなくてはいけないことが山ほどたくさんあった。

スキーカットで雪崩を切ったり雪庇をおとす方法や、雪崩れやすい地形やコンディションに対する理解が必要だった。

スキーの技術に関してもそうだ。

来る日も来る日もスキーを履いて、出勤の日も休みの日も必死に滑った。スキーが上手くなければ仕事にならない。まさか人生でこんなにもスキーをすることになる日が来るなんて、思ってもみなかった。

雪崩や雪庇を切るだけが仕事ではない。もし人が雪崩に巻き込まれれば救助が必要になるため、ビーコンおよびゾンデを使用した一連の捜索救助訓練も行われた。

いざ現場で、とっさの時に冷静に対処できるようにならなくてはならない。それはとても難しいことだ。

来る日も来る日も何かしらの壁にぶち当たり、打ちのめされ、それでもチームから振り落とされたくない一心で、先輩の背中を必死に追いかけた。

やれるだけのことはやった。でも、自分のものにしきれないままにシーズンを終えてしまった感はこの上ない。振り返れば、もっとあれができたのでは、これができたのではという思いが湧く。けれど、休まざるをえないぐらいどうしようもなく疲労困憊した時もあった。

シーズンの中盤以降は、体のあちこちにガタが出て、動きたくても動けない葛藤がつきまとった。

冬は終わってしまった。だけど、来年この仕事が始まるときのスタートラインを少なくとも今以上にしたいと考えると、夏のシーズンもおちおちしていられない。

来年に向けて、課題はたくさんある。スキーが上手くなること、雪崩を切れて、雪庇を落とせて、サーチ&レスキューがきちんとできること、自然が示す細やかな変化を見逃さないこと。そして何より重要なのは「チームとして強くあるために自分にできることを模索すること」だ。

チームのため、自分には何ができるんだろう?そう考えたときにたどり着くのは、できるだけ足を引っ張らないようにすることだけだった。それは最低限果たすべき義務であって、チームにとってプラス要素にならない。おまけに、先輩たちに体力や技術の面で勝るわけもなく、私は本当にこのチームにいて良いんだろうかと何度も思った。

ちょっとしたミスをすると、先輩に半分冗談で「詰め所の裏の崖から落とす!」と言われたけれど、もういっそのこと落としてほしいと思ったのは一度や二度ではなかった。

さて、チームの中で一番スキーが下手で、体力もない私に一体何ができるのか。女が体力やパワーの面で男と真っ向勝負するのはどう考えても間違っている。じゃあ私にしかできないことは何だろう。そう考えると、救いがある気がする。経営学ではないけれど、ブルーオーシャンを追求することで、チーム全体としての強さに少しは貢献できるかもしれない。毎日のように打ちのめされると目に見えていても、来シーズンのことを考えるとわくわくする。

肉体的にも精神的にもハードな仕事だが、私はどこまでも雪の道を極めたい。とにかく一人前になりたいし、一流になりたい。これは間違いなく天職だ。四六時中ずっと大好きな雪のことを考えていられるのだから。

自然に翻弄されながら、泣き笑い、もがき苦しみ、そうこうしながら冬が終わった。今までの人生で最高の冬だった。来年もまた同じことが言えるように、毎日を積み重ねていけたらいいなと思う。