Darling!

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出会ったのは7年前の6月だった。
まだ免許をとったばかりだったので、マニュアル車を運転できるのか不安を抱えながら、どこまでも行けるような気がしてとても嬉しかったのを今でも覚えている。

それからはときに友達と、ときに一人で、突発的なドライブによく出かけた。
大学時代は深夜の草津や赤城山麓をはじめ、どこまでも18号線を行く旅とか、あえて迷子になる旅とか、色々な人と色々なことをやった。
卒業後は突拍子もなくどこかへ行くことは減ったが、私の自由気ままにどこまでも付き合ってもらった。

7年の間には色々なことがあった。
たくさんの人や物と出会って、別れて、再会したりしなかったり、いくつもの景色が目の前を通り過ぎ、何かしら影響を受けて、少しずつ今の私ができてきた。
その過程を、ずっと近くで見守ってくれた。
笑って泣いて、怒って悲しんで、歌ったり愚痴ったり。普段人には見せない深い内側の部分まで包み込んでくれるような気がして、心が落ち着いた。
自分の部屋や実家以上に居心地が良かった。

雪道から山道まで特に気も遣わずにガンガン入って、ときに燃料タンクをへこませたり、シャフトを微妙に曲げたり。申し訳ないことをたくさんして何度謝ったことか。
7万キロ前に出会って今が15万キロ代後半だから、その距離は地球2周分以上。
それだけ走れば色々あるよね、と寛大に許してくれることを願う…

最後は足回りの調子がいよいよ悪くなったので、納車まで約1週間代車に乗ることにした。
荷物を積みかえていよいよ本当に最後のお別れとなったとき、涙をこらえるのに必死だった。
自分の荷物が何もない車内は、いつかの引っ越しを思い出させた。
自動車店を出て代車を運転していたら、涙が溢れてきた。
「ありがとう」とともに、今までのあらゆる出来事がフラッシュバックして走馬燈のように流れていく。
ひと段落したとき、心は乾燥したスポンジみたいにスカスカだった。
たかが車一台で大げさかもしれないけれど、自分を構成していた大きな要素が欠けてしまった感じ。
いつの日か大好きだった人と別れた時に少し似ている。
今までいかに頼りにしてきたのかを思い知る。
「今の車に一生乗れるわけじゃないから」と、人は言う。それは事実で、来るべき時が来た。

そして納車の日。走ってみればとても軽快で、「子気味良い」とはこういうことなのだろう。
新車同様の車を自分の色に染められるので、とても楽しみだ。
足回りはどうしよう、タイヤは?ホイールは?ルーフラックを載せたいし、オーバーフェンダーもつけたい。貼りたいステッカーもある。
あそこをああしてこうしてコショコショ・・・妄想が膨らんでいく。
色々と手をいれたら、世界で一番可愛いくておしゃれな相棒になってくれそうだ。
だけどふとした拍子に、赤いハッチバックが思い出をのせて私の頭の中を走り抜けていくだろう。
そのときは懐かしい場所に行くもよし、お世話になった人に連絡するもよし、新しい車を手入れするもよし。
今と今に至るまでの流れや、人とのつながりを大切にできているかを自分に問いたい。

ファミリアはこれからもずっと、私にとって特別な車でありつづけるのだろう。

今まで本当に、どうもありがとう。

    
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