【山小屋2018】見送る背中

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

小屋じめも近づき、スタッフがひとりまた一人と下界に降りていく。
期間は人によってまちまちでも、数カ月一緒に働いてきた同僚がいなくなるのは寂しい。

すごくさみしい。

今朝もまた一人仲の良かった女の子が小屋を発っていったけれど、足にしがみついてでも止めたかったし、リュックの中に私も入りたいと心の底から思った。

姿が見えなくなるまでずっと背中を見つめていた。

別に誰がいなくても小屋は回るし山はここに在り続ける。
よく言うように平凡な毎日はずっと続いていくけれど、寂しいものは寂しい。
寒くなってきているから、余計にそうなのかもしれない。

人間にとって、寒い感覚と不安な感覚は同じというのをどこかで聞いたことがある。
でも、寒いと寂しいもきっと同じだと思う。

別に何が心配で何が不安なの?と聞かれて明確な答えがあるわけじゃない。
でも、季節が移ろっていくことが何となく不安で、紅葉の色がその先の冬を囁いているようで、落ち着かない。

今日下山した彼女は以前、星野道夫さんの『旅をする木』からこんな一節を教えてくれた。
「寒いことが、人の気持ちを暖めるんだ。離れていることが、人と人とを近づけるんだ。」
彼女によれば、星野道夫さんが結婚して、奥さんがアラスカにやって来たとき、現地の人が言った言葉らしい。
とても寒くて、隣の家まで数キロ離れた場所で暮らすとこういう気持ちになるのかな。

環境は全く違えど、この言葉は下界と山小屋を行き来する生活にも通ずるものがある。
全く違う環境にいるから相手を気づかうし、いつでも会えるわけじゃないから思いを馳せる。
この言葉を心に抱いたら、寂しさを振り切って残りの山小屋生活を送れる、そんな気がした。

    
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。