雪と山小屋の1年を振り返る

Feel/Think

またしても、1年が実感を伴わないままに終わろうとしている。
少し長くなるけれど、季節労働者も板についてきたこの1年を振り返ってみたいと思う。

2018年1月〜3月
スノーモービルに引かれて詰め所に上がる途中で初日の出を見たところから一年が始まった。
今でもはっきり思い出せるくらい、特別な気持ちで迎えた新年だった。
2017-18年のシーズンは雪が降り積もるのが早く、年明けの段階で本格的に仕事が始まっていた。
それから3月いっぱいまで、雪の仕事は続く。
毎日毎日、チームに遅れないように、雪崩に埋まらないように、必死で過ごしていた。
雪崩のサーチ&レスキューの訓練や実際の業務で、何かミスをするたびに先輩から「はい、人死んだ」「詰め所裏の崖から落とすゾ!」などと言われつつ…
今年はそういうことを言ってくれる人がいないので、穏やかで、少し寂しい。

4月
一応仕事は終わっていたけれど、最後にチームでショべリングの訓練をした。
閉鎖されたコースにあるキッカーをチームみんなで全力でローテーションしながら掘るという内容。
設定は「平らなところで3m埋まった人を掘り出す」ということだったけれど、1.5m掘るのに25分かかり、その時点で先輩のショベルが金属疲労で折れ、みんなも疲れ始め、先輩の名言が飛び出す。
「3mはもう死体だ!!全力で掘るのやめよう!!!」

(え!笑)

結局、そのあとペースを落として無事に3m掘り終え、打ち上げをかねてステーキを食べにでかけたのだった。
(もちろん、実際の現場でその人1人だけしか埋まっていなければ、力の続く限り全力で掘り続けます。)
冬の仕事が終わると、それまで張り詰めていた何かは雪とともに消えていき、まったく平穏な日々となった。
山小屋でお世話になりまくった姉さまのところに居候させてもらったり、花見に行ったり、懸垂下降まつりをしたり、京都の友人に会いに行ったり。
ゴールデンウィークは立山を満喫し、シーズン中に全く行けなかった山スキー欲が満たされた。
移動で忙しかったけれど、滞在させてもらったところではゆっくりと過ごさせていただいた。

5月
連休明けに石川の雪と氷の科学館へ行く。
雪の展示もすごく面白かったけれど、雪の研究のさきがけで知られる中谷宇吉郎さんの生き方がとても素敵で「生きることはバラで飾られなければならない」という一節を思い出した。
そのあとは車中泊生活。
車の調子が悪くてあまり走りたくなかったので、公園でブラブラしたり、図書館で本を読んだりして、怪しいけれどもこれはこれで楽しい生活を送る(ただの浮浪者!)。
いよいよ車を買い替えるときが来て、メソメソしながらお別れする。今でも泣ける。
ラーメンを食べに行ったり、大好きな霧ヶ峰へ行ったり。
車が納車となり、あまりにも小気味よく走れるのでルンルン。
飛行機の時間を間違えていて、空港には余裕で着いてるのに乗り遅れそうになりつつ帰省。
高校卒業ぶりに友人と会ったり、知人に挨拶へ行ったりした。

6月
いよいよ始まった山小屋生活2ndシーズン。
雪に埋まった水場を掘りに行ったり、ご飯を作ったり、布団干したり、荷揚げ荷下げの準備、そうじ、客室づくり、筋トレ、読書、スキーに追われる毎日。
あぁ山小屋の生活、いよいよ始まったという感じ。
ただ移り変わる空の色や雲の形を見ているだけでも楽しいけれど、仕事をして、ご飯を食べて、遊んで、学んで、人間が生きる基本が詰まっている。
まだお客さんも少ないので、好きなことを好きなだけやらせてもらった。感謝!

7月
スタッフが増え、お客さんも増え、賑やかになってくる。
ネパールから職人さんが来て登山道を直してくれたり、台風の影響を受けてずっと外に出られなかったり。
お休みをもらって、劔岳を目指すも天候に恵まれず、仕方なく別山の名もなき岩場を登って終了。
小屋に帰ったら、発電機やら水場やら色々なトラブルが発生したらしい。みんなピリピリ疲れた顔をしていて少し悪い気がしたけれど、逆に元気な空気を持ち帰って流れを変えたということで良しとする。
それから2週間ほどのち再度休暇をもらって友人の結婚式へ。
大学のときには分からなかった友人の良さを、今となって認識。
小屋に戻るも下界の暑さにすっかりやられ、体ダルオモ…
台風で屋根が飛び、飛んだ屋根を拾いに行って7月が終わる。

8月
ヘリの荷揚げと同僚の誕生祝いからスタート。
残雪もかなり少なくなり、山が青みを増し、これぞ夏山!となる。
友人が遊びに来てくれて、一緒に岩場を登る。
休暇をもらい、白山の大白水谷を遡行。沢はもちろん楽しかったけれど、林道が工事のため通行止めで、10km以上を歩くところからスタート。冬山か!笑とツッコんだのが1番記憶に残っている。
無事に遡行を終え、小屋に戻る。
ごくごく平和な日常を送っていたら、写真のデータを整理していたときに大好きだった彼氏の写真を見つけ、個人的にめっちゃブルーになる。
8月18日、初氷!!貯水タンクのところに氷柱ができていた。
お盆すぎからずっ天気が悪く、デビルマンやキューティーハニー、マジンガーZ、マーズなど、ちょっとレトロな漫画を延々と読む。それぞれがそれぞれのベクトルで衝撃的な内容。
我らがボスの誕生日、タッパーにゼリーを作ってお祝いする。大量に作りすぎて、「オジサン育成ゲームか!」とツッコまれる。いや、まさかその量を1日で食べ切るとは思ってなかったよ…と心の中で激しく反論。

9月
またしてもヘリから始まった。
大型の台風が来て、立っていられないほどの、小石が宙を舞うほどのとんでもない風が吹きつける。
7月に続いてまたしても屋根が飛び、駐車していた車同士は動いてぶつかり破損、とんでもない惨事だった。
自分の車を確認しに、日帰り下山。
スタッフに風邪ひきさんが多くなる。
ちょっと手間のかかるご飯を作ってみたり、お菓子を作ってみたり、燻製やおはぎも。
日曜日に世界の果てまでイッテQ!を事務所でボスと見るのが慣例になる。
腰の調子があまり良くない。
休暇で2泊3日の北岳バットレス。
たくさんボルトが打ってあって、この場所の歴史に思いを馳せる…
無事に登りきって、解散したのち、知人を訪ねる。
休暇で降りていた同僚をピックアップして、一緒に上山。
一緒に働いてきたスタッフが1人また1人といなくなり、寂しい。
9月末、同僚と休暇で諏訪松本宇奈月観光。
誰かと旅行することは滅多にないので、すごく新鮮で楽しかった。

10月
雪が降って、見慣れた景色は白色に凍る。
少しずつ小屋じめの準備に向けて動き出す。
最後のヘリが終わってみんなでソフトクリームを食べる。
星野之宣の漫画を読みふける。
朝、ご飯を出す時間がハイシーズンより遅くなり、みんな少しゆっくりな朝。
ある日朝イチで電話がなったので事務所に取りに行ったら、奥からパジャマ姿のボスが現れまさかのハチ合わせ、なんであんたがここに!?って顔されたけど、なんだか可笑しくて思い切り笑ってしまった。
イモが余る!と言っていたら、一箱おろして車に積んどきゃいい、畑借りて植えりゃぁいいと言う話になったけれど、さすがに遠慮。
番組入れ替わりの時期で特番が続きイッテQ入らないよーって駄々こねていたら、かわりに大魔神シリーズを見せられた。
客室をつぶしたり、雨戸をはめたり、小屋じめの準備はつづく。
ボスは帰りたくない病にかかり、誰かが小屋じめ作業をしているのを見るにつけ文句を言っていたっけ、理不尽笑。
そんなこんなしながらも、一日一日がすぎてゆき、いよいよ本当に小屋じめの日がやってきた。
下山日、すべての作業を終えて、下山し、風呂に入り、居酒屋で打ち上げ。
解散したあとも3時30分頃まで延々と飲み歩く。
翌日、ボスによる通称「拉致旅行」。拒否権はあるようでないようで…
旅行のあとは、石川でのんびりすごし、友人に猫の世話を頼まれて京都にゆき、洗車したりアニメ見たりしてのんびりと過ごす。

11月
引き続き京都に滞在。友人宅を起点に、正倉院展へ行ったり竹田城跡に行ったりする。
フェリーで帰省し、雪崩の講習会に参加。本当は大学時代サークルのOB会に行きたかったのだけれど、やむを得ず。
3週間ほどの帰省で、歯医者へ行ったり、母校に行って恩師に会ったり、親戚の家へ行ったり。
車検を通す。
札幌国際スキー場で初滑りしていたら、ギャップを越えたときポキっという音とともに腰に痛みが!!
そのあと何日か、整骨院に通いましたとさ。
本当は手稲も滑りたかったのに…
再度雪崩の講習会を受け、北海道に雪関係のつながりができる。とても嬉しかったのと、次の1歩を踏み出す勇気をいただく。
再度フェリーにて本州へ戻る。
南へゆくほうが揺れる気がする。

12月
冬の仕事はじまり。
雪がなかなか降らず作業が全然ない、手持ち無沙汰な状態が続く。
住むところがなかなか決まらなかったものの、旅館に居候生活させてもらえることになる。ご飯がめちゃくちゃ美味しくて幸せ。
中旬、ドローンのフライトオペレーターの講習を受けに滋賀へ。
ついでに京都の友人にも会う。
雪が降らないなあと思っていたけれど、ぼちぼち降り積もり、仕事もすこしずつ増えてくる。
今季は板もブーツも変えて調子よく乗っていたら、ソールに柿ピーくらいのガッツリ傷がつき、直したと思ったらソールトップのロゴが取れてプランプランしており、接着剤でくっつけ、板運ないなぁ…と。
先ほど年越しそばをいただき、「良いお年を!」と居候先の皆様に挨拶をし、ごろごろしながら今に至る。

2018年はとてもいい年だった。色んなことをやってみて、色んな人に会って、色んな価値判断基準を知って、学んで、自分がやりたいこと、できること、できないこと、やらなくていいことが少し分かってきたように思う。

まだまだ努力して、勉強して、進み続けなければいけないことだらけだ。

その中でも私にとってのいちばん大きな課題は、表現して、伝えること。
文字でも写真でも絵でも何でもいい、自分が経験したことを相手にしっかり伝える、ということを意識して、2019年は過ごしていきたい。

2018年も残すところ数時間。
こんなとりとめのないブログを読んで下さりありがとうございました。
良いお年をお迎えください。