【山小屋2019】秋が来た

山小屋日誌

8月最後の日、何日も降り続いていた雨がやんで晴れになった。

お兄さんが言った。

「風が秋だね」

景色の色は盛夏を過ぎ、天は高く、柔らかい陽がさしていた。

ついこの前まで強い日差しや遠くそびえる入道雲に夏を感じていたのに、山の季節が移り変わるのは早い。

気づけば小屋じめまで約1ヶ月半だ。
毎年この時期になると、やり残していることはないか、残りの期間でできるのか、ソワソワと考え始めてしまう。

春先の入山のときにやりたいと思っていたことは、あまりできていない。
その代わりではないけれど、今期は今のところ美術史と相対性理論を勉強して、将棋がちょっと強くなって、倒立ができるようになった。
統一性はゼロだけど、知りたいこと、できるようになりたいことをちょっとずつ。

山小屋はとても閉鎖的な空間だけど、だからこそ、みんなで同じ本や漫画を読むことがそのまま話のネタになり、コミュニケーションに繋がったりする。
将棋も強い人がいるので教えてもらえるし、倒立も一人で練習していたら同僚に見つかってその人も練習し始めたし、そんな感じで、お互いに影響を与え合いながら毎日が過ぎてゆく。

そして気づけば、去年は天気の悪い日にみんなで大部屋でMCハマー踊って疲れたなぁ、みたいなどうでもいい大切な思い出が積み重なってゆくんだ。

山小屋の人間関係って、難しくて単純で、苦手な人とも上手くやっていかなきゃいけないけど、一緒に何かやったら意外と仲良くなれたりするから、小学校や中学校のクラスとあんまり変わらない気がする。

少し冷たい秋風のせいかな、一緒に働いた人たちのことを思い出したら懐かしくなってしまった。

これから風はもっと冷たくなるし、台風も増えるし、残された日数は毎日1日ずつ少なくなる。

植物もどんどん色を変えて、紅葉がいい感じになっていくだろう。

あっという間に季節は変わる。

まだ小屋じめまで1ヶ月以上あるのにもう寂しいのは、やっぱり風が秋を運んできたからなのかな。