【山小屋2019】下界の誘惑

山小屋日誌

下界の夏は誘惑でいっぱいだ。

休暇あけの人が持ってきてくれる情報誌、テレビのCM、ラジオ、風のウワサ…誘惑が半端じゃない。
特に破壊的な威力をもつものが、花火大会とプールだ。
「あぁ、浴衣着て彼氏と花火行きたいなぁ」
「あぁ、水着きてプールでキャイキャイしたいなぁ」
妄想が頭をぐるぐる支配し始める。
もちろん彼氏なんていないし、一緒にプールに行ってくれるような友達もいない。
そんなのは異世界の話だ。
花火もプールも、そんなカラフルでPOP☆なものはこの世界には存在しない。
だってここは天空の城…なんだと思う。そう信じたい。信じてる。

この前のこと。
「きみ、今夜僕とデートしない?あ、今夜じゃなかった明日だった」
というボスからの急なお誘いがあり、突如下界に降りることになった。
ボスは金沢に用事があり、日帰りでは大変、ついでに誰かと下界に降りちゃおっかな〜、みたいな感じだと思う。
久々の下界には、すべてのものがある気がした。
目に入る物すべてが魅力的で眩しすぎ、失明しそうだった。
美味しいご飯をたくさん食べさせてもらって、ミュシャ展や写真館ほか、色んなところに連れて行ってもらって、温泉に入って、ビジネスホテルのベッドで思い切り大の字になって眠って、翌日は図書館や見晴らしのいいところや新鮮な野菜が売っているところなどなど、本当にたくさん連れて行ってもらった。
心の底から下界は素晴らしいと思ったし、ボスありがとーー!!と思った。
花火もプールも行けなかったけど。もう少し言えばミュウツーの逆襲も見られなかったけど(欲張り)。
それでも下界は最高だった。
これが、今年の、わたしの、夏なのか…

本当に帰る段階になって、どうしてももう少し下界を味わいたくて最後にお願いしてみた。

「もう一つお願いがあるのですが、帰り道にサーティワンあったら寄ってもらっていいですか?」
「ふん、オヤジには理解できない色のアイスとか食べにいくんでしょ。」
寄ってくれるのかなぁ?くれないのかなぁ?と思っていたけれど、ちゃんとショッピングモール内のサーティワンに寄ってくれた。
あぁ、下界の味と色。
ところで、どうしてこんなにミュウツーの逆襲を推してるの?

こうして、未練を残したまま拉致デートは終わったのであった。
これほどまで山に帰りたくないと思ったことはない。
そのくらい、下界は素晴らしいと思った。
最近、山小屋の生活が毎日毎日平和すぎて、ちょっと退屈になってしまい、まぁ恋人同士で言うなら倦怠期みたいな感じなんだ。
暇は人をだめにしてしまう。

ところで下界は娯楽に事欠かないはずなのに、下界に行っても退屈を持て余すことがあるのは一体どうしてなんだろう?
そんなことを考えつつ、皆さんの夏が充実していたことをお祈りします。